英車部品の現状と豆知識


 昔から言われていた「英車の部品は何でもある」との状況は、最近ではそうとも言えなくなってきています。  
戦前の車種は言うに及ばず、比較的揃いやすいと思われる'50年代以降のトライアンフ・ノートン・BSA等でも当時の純正部品は市場から姿を消しつつあります。  
また純正部品の補完として存在するレプリカ部品(注1)も英車市場とともに縮小傾向です。 

生産国も台湾等のアジア圏諸国に加えてインド製部品(注2)も増え、いくつもあるレプリカ部品メーカー間の競争も激しくなった結果、安かろう悪かろうの低品質な品が多くなってきています。
純正品を名乗る中にも、実際には台湾をはじめとする東南アジア製も多くなり供給側も混同しているケースも多いようです。

ご存知の通り、現在では家電・光学機器等々の日本の一流企業製品も実際には東南アジア製造が非常に多くなっています。
しかし、それらは品質管理も日本企業が責任を持って行っていますが、現在生産されている英車のレプリカ部品はそうではありません。

現在流通している、インドの代表的ブランドが下記です。
・MADBULL  - 下記のロックキーから電装品まで、いろいろな部品。
・MINDA   -   テールライト等の電装品。 
・AMBIKA   -   スパナ等のハンドツール類。
・TOTEM   -   各種タップやダイス類を供給していますが、元々はイギリスの会社のようです。
他にもラバー類等々、多種多様な中小無名メーカーの品が存在します。

現在インド製しかない部品は殆どありませんし、それしか無い場合を除きインド製部品は取り扱っておりません。

 

(注1) ここで言うレプリカ部品とは「英車用の非純正リプロ部品」の事であり、国産車等を含め何にでも取り付けられる汎用部品という意味ではありません。 
(注2)「インド製は全て粗悪」という意味ではありません。

 


 

レプリカ部品同士の違いや純正品との違いを下記にいくつか載せていますので参考にしてください。
注)一部の品は参考資料として載せており、取り扱いしていない品も含まれます。
 
・ タンクバッチ
写真のゴールドスター用に限らず、樹脂製のバッチ類にも種類があります。
           
左)イギリス製。
右)台湾製。  
仕上げや色彩に大きな差があります。

写真では逆に見えますが、少しくすんだ色合いのイギリス製純正品に対し赤が鮮やかな台湾製です。

 
・ ステアリングロック

いろいろな車種に使われている品です。
 
  
左)Made in England等の刻印の入る品。
中)刻印は入りませんが、それ以外は左と同等品。
右)MADBULLブランド品、他の2点とは材質が違い造りも荒く見劣りします。

 
・ ラバー類(トラ用)
 キックゴム

             

左)非貫通品。
中)貫通のトラ字体の細い品。 
左と中の品は製造元の違いによる材質が違う品が、それぞれ確認しているだけで3種類以上あります。
右)貫通のトラ字体の太い品です。 

 
 ステップゴム
            
左)トラ字体の太い、しっかりとした品。 
この品には、材質の違う2種類以上があります。
中)トラ字体が細い品。 
この品には、他に出来の違う3種類以上の品があります。 
左と中の品は同じ部品番号になります。
右)ラインの違う、一部年式用。

 
・ ハンドルグリップゴム(1インチ用)

  
写真では分かりづらいのですが、それぞれ字体や品の厚み、材質が違います。
これらは全て同じ部品番号で他にも2~3種類ありますが、物によっては耐久性に問題があります。

 

・ クラッチ板(トラ用 コルク板)
代表的な品が下記になります。 
7枚キット品を除き、純正部品番号では全て同じ品です。
それぞれに切れ・スベリ・耐久性・鉄板との相性等々の長短所があり使い分ける必要があります。

     
左)現在、いちばんポピュラーな品。         
右)左の物と同仕様で、ベース板が鉄ではなくアルミになった品で耐久性が疑問。 

 
  

左)比較的スベリに強い品。                 
右)スベリには強いが、現在は少なくなった品。  

 

       
一時は市場にこの品のみだった時期もあり、よく知られた旧サーフレックス製。
650~750の普通の湿式クラッチに使う場合、余程しっかり組まないと必ずと言っていいほどスベります。

 

 
左)多少高価ですがスベリに一番強く造りも丁寧な品ですが、現在は生産されておらず入手困難です。 
安かろう悪かろうの品に淘汰されて消えてしまった品でしょう。     
右)あまり一般的ではありませんが、7枚キットの品。 

 
・ クラッチ板(各車種用 鉄板)   
鉄板にもいくつもの種類があり、材質や仕上げ(摩擦係数・細部)や熱処理、歪みの大小等に差があります。
それらによってはスベりや切れ、耐久性に問題が発生します。
材質や表面仕上げ等については写真では伝わりませんので載せませんが、例えば細部仕上げの差は下記になります。

 
右のタイプは、組み込み前に左のようにヤスリ加工した方が良いでしょう。
良否の判断で重要になる歪みは、鉄板のみ数枚を重ねて光に照らすと簡単に確認出来ます。

 
・ エアーエレメント  トラ等、いろいろな車種に使われている品。

  
左)金網に覆われている品。 
これには、金網の目が正規より荒い品があります。
中)濾紙の一般的な品。 
これにも異なった製造元の品が2種類以上あり、内側のP/Mや濾紙の材質が違います。 
それでも左)と中)の品の内、造りの良い品はオリジナルに近い物です。
右)白い濾紙を使った品で、急に増えてきた安価な品。 
中の品と基本的には同仕様ですが、材質・造りや仕上げにコストダウンが目立ちます。
またバラ付きも大きく、品によっては厚みが僅かに足りずケースの中で遊んでしまい機能しません。

 
・ 点火コイル  '60~'80年代のいろいろな車種に使われていた40ミリ径の例です。
純正採用品はルーカス製からスタートし
途中から同仕様のドイツ製が加わりました。 

         
  
左)と中)はドイツ製で、上部にドイツ製(最近はEEC製)の表示が入ります。
右)現在主流の台湾製レプリカ品です。
ステッカーに台湾製の表示がありますが、剥がしてしまうと上記刻印以外はそっくりです。
ドイツ製は供給難ですので製造中止になったのかもしれません。

最近ではプラグコード差し込み部がネジ状になった、安価で造りも荒いインド製が大量に流通しています。


・ ライトハウジング・ライトリム(反射してしまいロゴが写りませんので写真無し)
ルーカス純正ライトハウジングは、下側表面にルーカスとP700等の刻印が入ります。
見比べると無印レプリカ品はメッキに差があり長期的な耐候性は不明ですが、単独ではそれほど見劣りしません。
ライトリムは純正品にもロゴは入りません。
リムもメッキのツヤ(メッキ厚の差?)でレプリカは見劣りします。
でも見比べたことがない人は不満は出ないと思います。

 
・ コンビスイッチ  トラを初め、'50~'60年代の各車に使われていた、メインとライトのコンビスイッチ。

 
左)ルーカス製デッド品で本体やキーにルーカスのロゴが入ります。
右)台湾製のレプリカ品。 

純正品の方が全体的に造りが良く、スイッチの節度感が全く違います。
   
・ ベアリング

  
RHP等の一流メーカー品から、聞いた事の無い東南アジア製や無印の物まで色々な品があります。
製造メーカーや型番の確認は勿論の事、
組み込み時の締め付けられる分の遊び(内部すきま)が正しくなっているかに気を付ける必要があります。
英車は部品の加工精度があまり良くなく、特にエンジン廻りではそれを考慮する必要があります。
多くの場合英車では標準より大きい遊びの物を使い、その規格には大〜小まで多くの種類があります。
一般に流通している品は標準すきま(CN)の物が多く、遊びのキツい品を組み込むと最悪の場合は焼き付き等の故障原因になったりする事もあります。
ただ、内部すきま表示は現物には入っていない品もあるので注意が必要です。
また怪しい品では加工技術や管理の問題からか寸法に微妙なバラツキがある、使いたく無い品もあります。
英車ではよくある話しですが、今は無い専用ベアリングを採用していた場合は近い規格の品を加工したりして使います。
そのため、型番表示と違うサイズ・規格のベアリングが一部に存在します。

・ ハンドルクランプミラー

 

ワッセルミラー(俗称)とハルシオンミラーはミラー裏にロゴは入りません。
スタジアムはロゴが入り、取り付けナットも異なりワッセルミラーとは鏡の固定方法も違います。

 

・ バーエンドミラー


ハルシオンのアームには以前はMade in Englandのロゴが入りましたが、最近の品にはロゴが入りません。
箱でハルシオン(英国製)を確認する必要があるかもしれません。
スタジアムミラーの裏とアームにロゴが入り、ハルシオンとは固定ビス等も異なります。
さらに一見ハルシオンと見分けのつかないレプリカ品もあります。